『飛燕120』をつくる  

陸軍3式戦闘機『飛燕120』を作る

@ 《胴体・主翼すべてをFRPで製作》
設計・木型の製作・FRP加工法・塗装から飛行までを紹介いたします。

 

1) 設計の始まり(私の製作自論)

航空力学論など学んでもいない私が理論を語るなんてとんでもない事なので
これからのお話は自論ということで間違いについてはご容称下さることお願い
してお話を進めたいと思います。
趣味が興じて私が模型店を開業したのが昭和45年12月、当時機体の製作
が楽しくて60クラスの機体を1ヶ月に2機は完成させる程の熱の入れ様でした。
キットの製作から自作機と変わって行った頃、あるお客様と製作について激論
を交わした事がお付き合いのきっかけとなって設計理論を教えられた事
が自作製作の転機となってそれまでの私には設計理論(計算式)などはなく、何
十機というキット製作を手掛けているので自分の好みで『格好がよければ必ず良く飛ぶ』が
自論での製作でした。教えられた設計理論とやらの計算式にあてはめてみるとす
べてをクリヤーしているのですが、それ以来計算式による数値データーで製作
するようになったのでした。
前置はこれ位にして『飛燕120』設計から紹介して参ります。

2) 1/6.5スケールとしたわけ

自分だけの一機(大型機180エンジンクラス)を製作する計画でしたが、お客様
から自分も欲しいが180完成では価格で手が届かないとの話が出て、それでは
120クラスでいうこということになったのです。
しかし、絹張り塗装などさらさらやる気もなく、全部FRP製作を決定したわけ
です、むずかしく考えることはない、120〜140、4Cで安定よく飛ばすに
は1/6.5スケール全幅1846mm程度がボリューム感もあって丁度良いであ
ろうとの軽い気持で縮尺寸法を決定したのです。

3) 資料不足のままスタート

世界の傑作機飛燕の図面と1/48.プラモデルを組立てて設計に着手
方眼紙に1/6.5縮尺の原寸図(平面図・側面図)をえがいてみると水平尾翼・垂直尾翼の面積がお
どろく程小さく感じ、計算式に数値をあたはめ空力理論的に見てみる事にしたのです。

主翼面積の計算(面積計算はだれもが解るかと思いますので省略いたします。)
テールモーメントアームの算出
テールモーメントアームは主翼の空力平均翼弦の25%位置を空力中心として求め
水平尾翼の空力中心までの長さと教えられておりましたので次の様に求めました。

A/2点とB/2点を結びAの延長上にBを取り、Bの延長上にAを置いて図で示
した様に交錯した位置を空力平均翼弦(C)として求め、その翼弦長の25%位置
を主翼の空力中心としてもとめました。
※重心位置は空力平均翼弦の28%〜30%と考えました。

水平尾翼の空力中心も主翼と同様の考え方で算出し主翼の空力中心点から水平尾翼
の空力中心までの長さをテールモーメントアームと算出し1/65スケールダウンでの
テールモーメントアームは79cmと求めました。そこで静安定のみを考えての水
平尾翼の面積はどの位必要とするかを計算してみます。

水平尾翼面積の求め方

0.6という数値は水平尾翼容量又は、ボリウム比と呼ぶ値で固定された値では
なく実験的に求められる値という事で私の師匠先生の教えで重心位置を28%〜30
%と想定した時、間違いないであろうと算出した数値との事で0.6を選びました。

上記の計算で算出された面積値は単に静安定のみを考えた場合ですので縦の安定、つまり
縦の動揺に対する減衰特性、動安定を計算してみることにします。


         
先に求められた水平尾翼面積10.9duでは縦の復元も充分とはいえないことになっています。
1/6.5縮尺のスケールダウンの水平尾翼面積は計算で7.6duですので水平尾翼面積
を大きくするしかありません。
解決策として動安定はテールモーメントアームの2乗で効いてくることになりますのでテール
モーメントアームを延ばすことが抵抗も増えず効果的と考えられることにもなります。
なお、安定性は翼面荷重によって左右されて来ますのでスケール機の場合、あれもこれもと
欲が出て来ますので効率の低下の修正が必要となりますので少し大きめの面積とすることが失敗
しないことになります。

次に垂直尾翼面積の算出をしてみます。

垂直尾翼面積は図で示すように斜線部分までと考えることにします。

       方向安定のみを考えた垂直尾翼面積を次の様に算出してみました。


                
・垂直尾翼のテールモーメントアームの求め方は水平尾翼と同様に考え算出します。
・垂直尾翼のボリューム比は上半角効果との関連がありますので飛燕の上半角5°43’
と大きな上半角設計となっておりますので0.06という数値を選び計算してみました。

ここで計算された値は方向の静安定を満足されるための面積ですので次に方向の動安定を
計算してみることにします。

であれば偏揺れの減衰特性は充分な値となるとの教えにもとずいて計算をしてみますと
次の様になります


となり垂直尾翼面積は6.8duであれば充分安定性のある機体となることになりますが
・・・1/6.5スケールダウンの垂直尾翼面積は4.3du位の値で非常に危険な面積とい
えるのです。
これらの計算値でわかる様に水平尾翼面積、垂直尾翼面積を大きくすることになります。
しかし、これらの計算上で求めた水平垂直尾翼面積で作図してみますと非常に違和感のわく機体
となってしまいます。私はスタント機の製作の場合はすべての安定をクリアした数値の中で
スタント性能については自分の個性を組み込んでいたのですがスケール機を製作する場合非常に
難しい決断をすることになります。
以上の事などで求める計算値は絶対安定を求めるもので安定範囲に幅を持っておりますので私は
スケール感をそこなわない範囲で次の様な緒元で製作することに決定致しました。
ここまでの計算につきましては、機体を製作する場合の参考にして下さい。

主翼は実機の1/6.5スケール縮尺で製作する事にしました。この大きなテーバー比は実機
ならではの魅力といえるのですが翼端失速の傾向が出る心配が大ので1.5°ネジリ下げは
実機どうり採用する事にしました。
胴体は垂直尾翼面積を増やすことによって寸図まり感の出る胴体側面の違和感をおぎなうため
テールモーメントアームを2cm伸ばすことを決定し下記の緒元で製作することにしました。
スケール感を損なう事がなく安定のよい機体の製作を考える事で、水平尾翼・垂直尾翼面積等々
は決断が必要となる事です。
翼形の選考 私の手共には翼形資料がなく図面上での翼形に非常に似かよったのがTSAGI―16と
いうことで翼根TsAGI―16%・翼短TsAGI―09%を採用しました。
      

平成16年1月15日木型製作の準備に入り着手いたしました。

諸元
 
 全幅               184.6cm
 全長               143.5cm(スピナー含む)
 主翼面積             49.5du
 水平尾翼面積           9.8du
 垂直尾翼面積          5.75du
 テールモーメントアーム    水平81cm 垂直 82.5cm
 ネジリ下げ             1.5°
 上半角                 5°43’
 取付角
 翼形
  主翼 翼根 TsAGI―16%   翼端 TsAGI―09%
 水平・垂直尾翼        NACA63−1−012

更新予定

次回は木型の製作について紹介いたします。

樹脂のヌキ型の製作

FRP加工法

塗装とカラーリング仕上げ

メカ積から飛行まで


Copyright(C) 勝田ラジコン模型 All rights reserved